住まいの顔ともいえる玄関土間。近ごろは、単なる出入り口としての機能以外にも、暮らしやすさを左右する多目的な空間として、注目されるようになりました。この記事では、土間の魅力やその活用方法、玄関土間を最大限に活かすための設計のポイント、実際の建築実例とともに紹介していきます。
そもそも土間とは?
土間(どま)とは、床をコンクリートやタイルで仕上げた、内と外をつなぐ空間です。かつて日本家屋の土間は炊事場を兼ねていたり、農作業の準備をしたりする場所としても使われていました。しかし、生活スタイルの欧米化とともに、土間は靴を脱ぎ履きするためだけの場所へとその役割を縮小していったのです。
そして近年は、土間の機能性と拡張性が再び評価されるようになりました。単なる玄関の一部というだけではなく、収納スペースや趣味などの場所として、多目的に活用されるようになってきたのです。
玄関土間の活用アイデア
玄関土間は、土足のまま入ることができ、水拭き掃除もしやすい場所。その特性を活かしたアイデアを紹介します。
らくらく便利な収納に
玄関土間は、自転車・ベビーカー・三輪車など、屋外で使用する大きなモノの収納場所にも最適です。特に子育て世帯には、ベビーカーを畳まずにしまえる広さを確保した土間がおすすめ。そのほか、掃除道具・スポーツグッズ・アウトドアグッズなど、そのまま部屋に持ち込むことに抵抗があるモノの収納場所としても便利です。また、アウターを掛けられる場所を設けて玄関先で脱ぎ着すれば、花粉やホコリを室内に持ち込まずに済みます。
趣味を楽しむ空間に
土間を活用して、自分の趣味を楽しむ空間を作ることができます。掃除しやすい場所のため、汚れやすい作業も気兼ねなく行えます。たとえば、ガーデニングの準備、自転車のメンテナンス、DIYや工作をするスペースとして最適です。
ペットエリアとして
玄関土間をペットのためのスペースとして活用することもできます。汚れても掃除しやすいため、雨の日に散歩から帰ってきたときに愛犬の泥だらけの脚を拭いたり、ブラッシングをしたりする場所として便利です。ケージを置いて遊び場や休憩スペースにするのも良いですし、おもちゃやお手入れ用品などの収納場所にもなります。
玄関土間の設計ポイントと注意点
玄関土間を設計する際は、空間の機能性と快適性を確保することが大切です。ここでは、設計ポイントと注意点を解説します。
土間の用途をしっかり定める
使いやすい玄関土間をつくるには、その用途を明確にすることが大切です。何となく間取りを決めてしまうと、使いづらい動線になってしまったり、せっかくの空間が無駄になったりする可能性があります。土間をどのように使いたいか、家族の生活シーンを具体的に想像しながら設計を進めましょう。
素材選びが重要
土間の素材によって、玄関の雰囲気や使い勝手が大きく変わってきます。床材を選ぶ際のポイントは、耐久性とメンテナンス性、そしてデザイン性です。土間におすすめの素材はタイル。汚れや水に強く、長持ちするため多くの人に選ばれています。色やパターンのバリエーションが豊富なため、玄関のデザインテイストに合わせて選ぶことができます。
窓で光や風を取り入れる
窓から自然の光や風を取り入れることで、玄関土間をより快適な空間にすることができます。特にシューズクロークとして使用する場合は湿気やニオイがこもりやすいため、換気のための窓を設置するのがおすすめです。窓の設置が難しい場合には、空気を脱臭・除菌する機器(エアイーなど)の設置も選択肢に加えると良いでしょう。
外からの視線を想定する
宅配や来客対応で玄関ドアを開けたときに、室内が外から丸見えにならないようにすることも大切です。特に、室内空間が一体となった開放的な間取りの場合には、プライバシーの保護をしっかりと考える必要があります。視線の方向を把握したうえで土間の配置を工夫すれば、必ずしも間仕切りを設けなくても、開放感を保ったまま機能的な玄関をつくることが可能です。
玄関土間を活かした間取り実例
それでは、土間がどのように活用されているのか、間取りの実例を見てみましょう。さまざまなスタイルと用途に応じた玄関土間をご紹介します。
おでかけクロークのある玄関土間
こちらは、玄関の動線を2つに分け、ゲスト用と家族用それぞれに土間を設けた実例です。家族用の玄関は、収納棚を設けた「おでかけクローク」となっています。靴だけでなく、アウターやバッグ、そのほか外出の際の持ち物をここに集約しているため、移動しながら毎日の準備・片付けがスムーズにできます。また、普段使いの空間を分けることで、メインの玄関をいつもキレイな状態に保つことが可能です。
奥に収納を控えた玄関土間
玄関土間の奥に、収納を設けた実例です。ゲストからは見えない位置に、シューズクロークを備えています。
こちらの実例でも、玄関土間の奥に収納スペースを確保しました。盗難が心配な自転車も、そのまま収納できるため安心です。シューズボックスの裏手には、アウトドアグッズや防災用品をしまう収納を設けています。
扉も廊下もない玄関土間
開放的な玄関土間の実例です。玄関ホールや廊下を設けず、LDKに直接つながる間取りとなっていますが、動線が直角になるレイアウトのため、玄関ドアを開けても室内が丸見えになりません。土間横の大開口の窓から光が差し込む、明るい空間となっています。
ガレージにつながる玄関土間
こちらは、ビルトインガレージを設けたお住まい。玄関とガレージを土間でつないでいるため、買い物後の荷物やアウトドアの積み込みが短い動線で行えます。また、雨の日も傘をささずに車に乗り降りすることが可能です。
愛犬の居場所がある玄関土間
玄関土間から直接LDKへつながる、開放的な間取りの住まい実例です。土間にケージを置けば、いつも愛犬の様子を伺うことができますし、空調の効いた快適な空間で過ごせるため安心です。
まとめ:玄関土間を価値ある空間に活かそう
玄関土間は、単なる住まいの出入り口だけではなく、日々の暮らしを豊かにする多目的な空間にもなります。便利で快適な土間空間に大切なことは、使い方や目的を明確にすること。土間の用途に応じて素材やデザインを計画し、機能的で美しい空間を実現しましょう。