寒い季節になると空気が乾燥し、火災の発生が増加します。家族を守り安心して暮らすために、火災に強い家づくりについて考えてみませんか。火災を防ぐにはまず火を出さないこと、そして火が出た場合の被害を最小限に抑えることが大切です。この記事では、火災のおもな原因や対策、そして火災に強い住まいづくりのポイントについて解説します。
この記事のポイント
- ・住宅火災で亡くなった人の約半数が逃げ遅れによるもの
- ・初期消火できなかった場合に備え、避難時間を稼ぐことが大切
- ・省令準耐火構造の住宅は、類焼や延焼を抑える工夫がされている
火災の原因は?
総務省消防庁が公表した「火災統計」によれば、2023年(令和5年)の総火災件数は3万8,672件、火災による死者数は1,503人にのぼりました。そのうち、住宅火災は1万2,112件。住宅火災による死者は1,023人で、その約7割超が65歳以上の高齢者です。また、住宅火災の出火原因の1位は「コンロ」1,792件(14.8%)で、続いて「たばこ」1,401件(11.6%)、「ストーブ」818件(6.8%)、「電気機器」769件(6.3%)となっています。近年、総火災件数は減少傾向にあるものの、住宅火災では電気関係の火災件数が増加しており、「電気機器」「配線器具」「配線」を合わせると「コンロ」よりも多くなります。
出典:総務省消防庁「令和5年(1~12月)における火災の状況(確定値)」より作成
火災は冬場に多い
住宅火災の原因として多いものは、身近な火の不始末。月別に見ると、1~3月と12月が出火件数の多い時期となっています。この時期は「空気が乾燥する」「強風の日が多い」「暖房器具の使用が増加する」といった複数の要因が重なりやすいことから、火災が発生しやすくなると考えられます。
出展:総務省消防庁「令和5年(1~12月)における火災の状況(確定値)」より作成
出展:電気器具類を原因とする住宅火災の現状│総務省消防庁
火災を防ぐための基本ポイント
総務省消防庁では住宅火災を防ぐために「いのちを守る10のポイント」を提唱しています。まずは日々の生活で意識すべき4つの習慣を見てみましょう。
●4つの習慣
- 1. 寝たばこは絶対にしない・させない
- 2. ストーブは可燃物から十分に離して使用する
- 3. ガスコンロなどを使う際は火のそばから離れない
- 4. コンセントのほこりを掃除する、不必要なプラグは抜く
これらを心がけるだけでも、火災発生のリスクはぐっと下がります。さらに、6つの対策として以下が挙げられています。
●6つの対策
- 1. ストーブやコンロは安全装置が付いた製品を使用する
- 2. 火災警報器を設置し、定期的に点検・交換する
- 3. 部屋を整理整頓し、寝具・衣類・カーテンなどは防炎品を使う
- 4. 消火器などを備えて、使い方を確認しておく
- 5. お年寄りや身体の不自由な方がいる家庭では、周囲の協力体制をつくる
- 6. 防災訓練に参加するなど地域ぐるみの防火対策をする
日常的な習慣と火災を防ぐ環境づくりの両面から対策を行うことが大切です。
出展:火災予防啓発映像「住宅防火 いのちを守る 10 のポイント」の制作・発表│総務省消防庁
火災は逃げ遅れを防ぐことが大切
火災対策の基本は、何よりもまず火災発生そのものを防ぐこと。そのためにも、日常的な火の取り扱いに注意して、火が小さいうちに消し止められるように火災報知器や消火器を備えましょう。火元の部屋で鳴るだけでなく、一斉に他の部屋にも火災を知らせる「ワイヤレス連動火災報知器」もあります。
関連記事:ワイヤレス連動型火災報知器
そして、住宅火災で亡くなる方の約半数は、逃げ遅れが原因とされています。もしも火が大きくなってしまったら、すみやかに避難することが大切です。火災は、室内での出火→ほかの部屋への延焼→建物全体への延焼、という段階的な広がり方をします。住宅の耐火性を高めることは、炎の燃え広がりを遅らせ、家族が逃げるための時間をできるだけ長く確保するのに役立ちます。
木造住宅は火災に弱いの?
「木造住宅は火災に弱い」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、木材は熱を加えても急激に燃え尽きないという特性をもっています。木材が燃える際は表面が炭化しながらゆっくりと強度が落ちていくため、消火活動までに建築構造が崩壊するような危険性は少ないとされているのです。一方、鉄骨に使用される鋼材は一定の高温になると急速に耐力が低下するため、建物が崩壊することもあります。
火災に強い家は、建材の種類よりも「省令準耐火構造」に対応しているかどうかがポイントです。省令準耐火構造とは、フラット35を提供する住宅金融支援機構が定める防火性能の基準で、火災対策において重要な指標となっています。
省令準耐火構造の特徴
省令準耐火構造の住宅は、下記の3点が特長となります。
省令準耐火構造の住宅は火災のリスクが低くなるため、火災保険料が安くなるというメリットも。その一方、防火性能を高めるに建築コストが上がる場合があります。また、各室防火を実現するために、間取りやデザインの自由度に制約が生じる可能性があることも踏まえておきましょう。
出展:木造建築は地震や火災に弱いのでは?│一般財団法人 日本木材総合情報センター
出展:木造建築の防耐火性(木造建築は火災に弱くない)│木を活かす建築推進協議会
ウィザースホームの耐火性
ウィザースホームの住宅は、火災リスクに対応する構造を標準仕様で採用しています。
ファイヤーストップ構造
壁や床、天井内部の空間を枠組材で区切ることで、火災が発生した際に、炎や煙が建物内を一気に駆け上がったり横方向へ延焼したりすることを防ぎます。
多層外壁構造
外壁材の下地に窯業系タイルベースを使用。不燃性・難燃性が高く、熱伝導率の低い素材であるため、表面に火が当たっても内側は手で触れられる程度の温度で、隣家からのもらい火を防ぎます。
関連記事:技術と性能 耐火性
まとめ
住宅の火災対策は、第一に火を出さないこと。そして火災が発生してしまった場合の被害を最小限に抑え、家族が安全に避難できる時間をできるだけ稼ぐことが大切です。木造だから弱い、鉄骨だから安心といったイメージにとらわれず、防火性能に注目しましょう。とはいえ、耐火構造を高めるとコストやデザインで制約が生じる場合があるため、メリット・デメリットを踏まえた上でバランスのよい住まいを計画するのがおすすめです。火災に強い住宅についてより詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。