コロナ禍をきっかけに、私たちの日常生活の中で「感染症対策」の意識は大きく変化し、手洗い・うがいなどの習慣だけでなく、住まいそのものにウイルス対策を取り入れる方が増えました。また、ウイルス対策を施すことは、花粉症・ハウスダスト・アレルギー対策にもつながります。この記事では、ウイルスを「家に入れない」ための工夫と、感染してしまった際に「隔離しやすい間取り」、さらに清潔な暮らしを支える設備や素材選びについて解説します。
家づくりでできる「ウイルス対策」とは?
かつての感染症対策といえばマスク・手洗い・消毒といった生活習慣の工夫が主流でしたが、昨今は住宅そのものにもウイルス対策が意識されるようになりました。住まいづくりの際には
- ・ウイルスを入れない(家に持ち込まない)
・ウイルスを広げない(家族への二次感染を防ぐ)
・ウイルスを溜めない(清潔を保つ)
この3点をベースに設計を考えます。
ウイルスを「家に入れない」設計のポイント
ウイルス対策の第一歩は、家に汚れを持ち込まないこと。そのためには玄関まわりを整えることが大切です。外と内の境界を意識することで、室内へのウイルスの侵入リスクを大きく減らせます。
洗面台に直行できる帰宅動線
帰宅後すぐに手洗い・うがいができる動線設計は、感染症対策の基本です。玄関を上がってすぐの場所に洗面台を配置すれば、室内に入る前に手の汚れを落とすことができます。最近ではシューズクローゼット内や玄関内に小型の手洗い器を設けるケースも多くなりました。また、リビングを経由せずに浴室へ直行できる間取りにすると、帰宅後すぐにシャワーを浴びたい時や、子どもが外遊びで汚れてしまった際にも便利です。
玄関そばのシューズクローゼットやクローク
玄関先に衣類や荷物を収納できるスペースを確保すれば、外出先で付着したウイルスや花粉を室内に持ち込まずに済みます。シューズクローゼットやクロークを玄関横に設け、上着・帽子・バッグなどをしまえるようにしましょう。モノ
の置き場所を決めることで、玄関まわりが散らかりにくくなり、忘れ物の防止になるというメリットもあります。
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宅配便を非対面で受け取れる玄関
コロナ禍により一般化したシステムのひとつが、宅配便の非対面での受け取り。屋根付き玄関ポーチがあれば、雨の日でも荷物が濡れず、置き配をスムーズに受け取れます。さらに宅配ボックスを設置すれば、盗難や破損のリスクを大幅に減らし、配達時間を気にせずに外出できます。
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感染症にかかったときに隔離しやすい間取り
感染症にかかってしまったとき、家族への二次感染を予防する工夫があると安心な暮らしにつながります。
家族と分離できる隔離スペースを確保
感染時には家族とできるだけ生活を分けて過ごすことが基本。和室(客間)・ロフト・書斎といった個室を設け、いざというときには隔離スペースに使えるようにしておくと便利です。
専用トイレ・洗面室で二次感染を防ぐ
トイレや洗面室は二次感染が起こりやすい場所。感染時には水まわりを共有しないで済む間取りにしておくと安心です。2階にもトイレや洗面台を設けておくと、1階と2階で生活空間を分けることができ、隔離生活がぐっと楽になります。また、サブ洗面・トイレは日常生活でもメリットが多い設備です。家族の身支度が重なる朝の渋滞を防ぐことができ、就寝後に目が覚めても階段を降りずにトイレに行けるため安全性も高まります。
換気の工夫で空気を共有しない
感染症の防止には、定期的な換気が有効です。換気には「機械換気(換気扇など)」と「自然通風(窓による換気)」があり、両方を組み合わせることでより効果的に空気を入れ替えられます。また、感染症のなかには空気感染するもの(麻疹・水ぼうそうなど)もあるため、家族が過ごす空間と隔離スペースは空気の流れを共有しないようにして、部屋ごとに窓を開けて換気しましょう。
食品や消耗品をストックしておく
感染時は外出・買い物が難しくなるため、日頃から食品や日用品をストックしておくと安心です。パントリーなど大きめの収納庫があると、レトルト食品や箱買いの飲料、消耗品(トイレットペーパー・ティッシュなど)をまとめて管理できます。ストックを古いものから使い、新しいものを補充する「ローリングストック」を行えば期限切れが防止でき、災害時の備えにもなります。
ウイルスに強い!ウイルス対策の住まい実例4選
【実例1】ウイルスや花粉をブロックする玄関
帰宅後すぐに手を洗うことができるよう玄関ホールに洗面台を設けた実例です。また、LDKと玄関の間に扉を設けて空間をしっかりと分離しています。

ウイルスや花粉が付着した上着を室内に持ち込まないように、土間続きのシューズクロークを設けました。いつもキレイな空気を保てるように、換気扇と窓を設けています。

【実例2】玄関近くに洗面台とトイレを集約
大容量のシューズクロークを設けた玄関。上がってすぐの場所に洗面台を設け、LDKに入る前に手を洗えるようにしています。

デザイン性にもこだわった造作洗面台。洗面台の向かいにはトイレがあり、外出前や帰宅後すぐに利用できます。

【実例3】浴室へ直行できる2way玄関
こちらは家族用とゲスト用それぞれの動線を確保した2way玄関。左手側には上着をかけられるシューズクロークがあり、右手側から上がるとLDKにつながります。

シューズクローク側から上がると、ファミリクローゼットをまっすぐ通り抜けて浴室に直行することが可能です。

【実例4】デザインを揃えた2つの洗面台
帰宅してすぐに手が洗えるように、玄関先に洗面台を設けた実例です。さらに2階ホールにもサブ洗面台を設けて利便性を高めています。メイン洗面台をそのままコンパクトにしたデザインに仕上げ、統一感を高めました。

清潔な暮らしを送る設備と素材
日々の生活を支える設備や素材選びによってもウイルス対策を強化できます。
非接触で安心 タッチレス設備の導入
タッチレスの水栓やソープディスペンサー、自動開閉トイレを導入すれば、直接手で触れずに操作できるため感染リスクが下がります。特にタッチレス水栓はこまめに止水することが節水につながるほか、水垢がつきにくくなり日頃の掃除がしやすくなるというメリットもあります。
抗ウイルス・抗菌素材の内装材を選ぶ
抗ウイルス加工や抗菌加工のクロス・床材やドアノブもおすすめです。これらの内装材には、表面に付着したウイルスや菌の数が減少する特殊な加工が施されており、近年は製品のラインナップも増えています。また、防汚性能の高い素材を選べば、日々の掃除もしやすくキレイが続く住まいを実現しやすくなります。
換気システムと空気環境の整え方
住まい全体の換気計画は、ウイルス対策として大切なポイント。現代の住宅は高気密化が進み、機械(換気扇など)で空気を入れ替える24時間換気が必須となっています。空気を入れ替えつつ室温の変化を最小限に抑えるには、熱交換換気システムがおすすめです。また、換気システム本来の性能を発揮させるためには、定期的なフィルター掃除(交換)をしましょう。また、ニオイが気になる場所には「エアイー」の設置もおすすめです。イオンのはたらきで有害物質を抑制・脱臭し、快適な空気環境を保ちます。
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まとめ|ウイルスに強い家で、安心な毎日を
感染症対策は、これからの住まいづくりに欠かせない視点です。「ウイルスを家に入れない」「家族の二次感染を防ぐ」「日々の清潔を保つ」という3つのポイントを押さえることで、安心して暮らせる家になります。感染症を予防する家は、花粉症やアレルギーにも強い家です。家族の健康を守るために、住まいづくりの段階からウイルス対策に注目してみませんか?





